対人認知
ここでは対人認知の一部を解りやすくご説明させていただきます。
私達が他者と関わる時「相手は何を考えているのかな?」「どんな気分でいるのかな?」
そして「どんな行動をとるのかな?」
などを常に考えて他者と関わっています。
まずこれらは他者と関わる時の基本ですよね?
そして私達は他者に関する様々な情報をもとに、その人の性格を判断したり、行動を予測すること
を意識的/無意識的にしています。
例えば
「 あなたの知り合いの○○さんってどんな人ですか?」ときかれれば、
「やさしい人よ」とか、「頑固で真面目な人かな?」、「素直でイイ人よ」とか、
色々な答えかたをしますよね?
このように、あの人は「こんな人」と判断することを、
「対人認知」といいます。
では、あの人はやさしい人だと判断しているときは、
判断するだけの「何かの材料」はあるのでしょうか?
もちろん何らかの理由があるはずです。
思い浮かぶ「何か」がそういう結論をくだしているわけですから、
幾つかの材料となるものがあるはずです。
しかし、その人の全てを知っているわけではありませんよね?
私達が人を判断する時にはその人の行なったこと全てを見て、
「やさしい人」だと判断しているわけではありません。
私たちは、ある人の全てを知っているわけではなく、
実際に見たり、うわさを聞いたりした、その人のごく一部を知っているだけです。
普通はその情報をもとに人を判断しているのものです。
そしてそのごく一部のばらばらの情報や知識をつなぎあわせて、
その人の全体像を、自分の中で組み立てています。
その結果、あの人は、「やさしい人」だとか、「自分勝手な人」だとか、「真面目な人」だとか
結論づけているのです。
しかしこのような対人認知の仕方は「いつも正確で一定か?」といえばそうではありません。
状況により変化したり、自分なりに組み立てられたり、様々な対人認知の組み立てかたをします。
何故なら私達が行う判断は、与えられた情報の特徴をそのまま反映したものではなく、
過去の経験からの推測や先入観などをもとにした多くの推論が入り込んでしまうからです。
例えば先入観として使われるものに「ステレオタイプ」、経験からの推測としてつかわれるものに
「暗黙の性格観」などがあります。
補足
「ステレオタイプ」
「背が高い人は〜」「美人なら〜」「サラリーマンは〜」「公務員は〜』など
〜の特徴があるなどと皆が共通に持っている既有の概念
1人の外見についても、ステレオタイプが形成される。
2ステレオタイプの内容は比較的安定しており、変化しにくい。
3ステレオタイプは、性格傾向だけではなく、様々な内容を含む。
4例えば「社長令嬢」のように好ましいイメージを付与するステレオタイプもある。
「暗黙の性格観」
暗黙の性格観とは、簡潔に説明すると、人は皆、自らの人生経験などからパーソナリテ
ィー特性について素朴な信念体系を形成している。この信念体系を暗黙の性格観という。
この信念体系または暗黙の性格観がさまざまな対人認知を行っているといわれている。
次に対人認知を考えるうえで重要な要素である印象形成をみていきましょう。
簡潔に表現すると
印象形成とは特定の他者に関する情報をもとにして、そのひとについての全体的印象を形成する過程をい
います。(他者に関する情報とは容姿、声、身振り、噂や評判など)
アッシュは印象形成に関した心理学的研究をおこなった人物です。
彼は架空の人物の特徴をいくつかの性格特性を示す形容詞によって呈示しました。
それをもとにその人物の全体印象を形成させるという実験を行いました。
その人物の特徴としては
一つのグループには「知的な・器用な・勤勉な・暖かい・決断力のある・実際的な・用心深い」という特性リストを順に提示しました。
別のグループでは「知的な・器用な・勤勉な・冷たい・決断力のある・実際的な・用心深い」というリストを提示しました。
(二つのグループのリストの相違点は「暖かい」と「冷たい」のみです)
そして、形成された印象を両グループの間で比較してみたところ、
「温かい」のグループではその人物を肯定的にとらえ、「冷たい」のグループでは否定的にとらえるという顕著な印象の違いが認められました。
このことから人の印象形成をしていく際に、知的な/温かいなどの形容詞を等しい値で組み合わせて印象を形成するのでは
ないことが解りました。
つまり上記の実検で解ったことは、「温かい」「冷たい」などの中心的特性を見い出し、それを核にして他の情報を繋ぎ合わせて(体制化)
印象を形成していくことです。
確かに「温かくてかしこい人」と「冷たくてかしこい人」ではずいぶん印象は違いますよね?
更にアッシュはこんな実検も行っています。
先程の実検と同じように架空の人物の特徴をいくつかの性格特性を示す形容詞によって呈示しました。
上記と違う点は「温かい」を「冷たい」に変えたのではなく、提示する順番を変えたものです。
被験者に順番に6つの性格特性を示す形容詞を聞かせ、それにより、その人に対する印象を聞くという方法でした。
AB2つのグループに、ある人物の性格であるとして、6つの性格特性の形容詞を次の順序で聞かせました。
Aグループ
1. 知的な 2. 勤勉な 3. 衝動的な 4. 批判的な 5. 頑固な 6. 嫉妬深い
Bグループ
1. 嫉妬深い 2. 頑固な 3. 批判的な 4. 衝動的な 5. 勤勉な 6. 知的な
比較してみると分かるように、AとBに提示された性格特性を示す形容詞は同様なものでした。
相違点は聞く順番が逆なことでした。
AもBも同一の性格特性を示す形容詞を聞いているので、同じ評価を下すと思いがちですが、
結果は全く逆の評価がくだされました。
Aグループはこの人物に好感を持った人が多くみられ、逆にBグループはこの人物に好感を持ちませんでした。
このことから解ることは「最初に入った情報がその後の方向性を決めてしまう」ということです。
これを初頭効果とよびます。
つまり最初に「よい人」だと思えば、その後の情報が「悪い」ものでも歪められたり、変容させたりしてしまいます。
そして「よい人」だと思う情報をつなぎ合わせたり、変容させたりして、「よい人」に符号する印象を形成していくと
いうことです。
俗に「第一印象が大切である」といわれてきたことも納得がいきますよね?